ライジングエッジ(MSシャーシ)の改造に挑戦してみたよ!
ミニ四駆ステーション大会(3レーンでの店舗レース)用に、ライジングエッジを制作・改造してみました。
2017/6/5 この記事は「四輪駆動ラボラトリ vol.17」に収録されています。
> 詳細は「電子書籍」を参照
目次
ライジングエッジの概要
ライジングエッジは、漫画「鉄のラインバレル」の作者がデザインしたミニ四駆の1つです。 車輪まで覆い隠す大型のボディは、刀をモチーフにしているのだそうです。
ミニ四駆PROシリーズ No.25 ライジングエッジ(MSシャーシ)
改造したライジングエッジの詳細
これが、改造したライジングエッジです。
MSシャーシは、前(フロント)・中央(センター)・後(リヤ)が、それぞれ独立したユニットという構成です。 ですので、「コースに合わせて、ユニットごと交換してセッティング変更」なんて豪快なことも、できてしまいます。 まるで、漫画やアニメーションに登場する、合体・変形ロボットみたいですよね。 ゲッ○ーロボとか。
MSシャーシの特性をひとことで言うなら、「オブジェクト指向なシャーシ」です。 オブジェクト指向は「機能分割の考え方」という意味のIT用語ですが、おもちゃのブロックや住宅のプレハブなど、IT化が進む前から存在する発想です。
ライジングエッジのボディは、刀の鋭さと、ロボットメカの堅さを持ち合わせています。 ですので、ボディカラーには、あえて柔らかさを盛り込むことにしました。 そこで、基本は桃と黒にして、黄と銀をちりばめる配色にしてみました。 メカっぽさと刀のイメージを残しつつ、堅さを中和する柔らかさが、表現できたでしょうか?
ウイング中央を黒で分断してみたら、何だかリボンのようになってしまいました(笑)
改造その1:前後のバンパーをスライドダンパーにしてみた
ライジングエッジのモチーフとなっている「刀」にちなんで、前後に金属製のスライドダンパーを取り付けることにしました。 前(フロント)は「フロントワイドスライドダンパー」で、後(リヤ)は「リヤワイドスライドダンパー」です。
前後のユニットからバンパーをカットするのは手間がかかるので、「Nー03・Tー03 バンパーレスLED(赤)ユニット」にFRPプレートを経由して、スライドダンパーを取り付けました。 使っているFRPプレートは、前が「ミニ四駆PRO FRPサブプレートセット」で、後が「スーパーXシャーシ・FRPリヤローラーステー」です。
ちなみに、シャーシ中央は「MS強化シャーシセット(ホワイト)」のセンターユニットです。 こんな芸当が手軽にできるのは、MSシャーシだからこそです。
フロントのガイドローラーは、「2段アルミローラーセット(9-8mm)」です。 小さいながらも、高い安定性を発揮します。 また、「ローラー角度調整プレートセット」に付属の角度調整プレート2枚(2度+3度)を挟んで、スラスト角を5度にしています。
> スラスト角については「ローラーセッティングをマスターしよう!」を参照。
フロントワイドスライドダンパーをそのまま取り付けようとすると、シャーシの先端部分と当たってしまうので、双方を少しカットしました。 カットした箇所からスライドダンパー内部にゴミが入るのを防ぐため、「ミニ四駆マルチテープ(10mm幅 ブルー)」を貼り付けています。
リヤのガイドローラーは、軽くて接地面積が広い「17mmプラリング付 アルミベアリングローラー(ライトブルー)」です。 径は17mmですが、リヤワイドスライドダンパーなら、他のガイドローラーと同じく、ローラー幅を最大まで広げることができます。
ワイド系のスライドダンパーの金属プレートはかなり頑丈ですが、念のため、加工した「ARシャーシ FRPリヤワイドステー」を挟んで補強しています。 ちなみに、このFRPプレートは、17mm径ガイドローラー用の穴が空いている希少なパーツです。
リヤワイドスライドダンパーがスライドした場合、そのままではボディに当たってしまいます。 ですので、ボディ後部をカットしました。
スライドダンパーの取り付けに使ったFRPプレートの下に、緑色のブレーキスポンジを貼って、ブレーキにしました。 テープを貼って、初期状態はブレーキ無効にしています。 また、FRPプレートの後部は、余分な範囲をカットしました。
スライドダンパーがスライドしても、ブレーキが壁に当たらないことを確認。 ミニ四駆にスライドダンパーを取り付けた場合、こういった確認は大切です。 万一接触した場合のコースの破損や、コースアウトによるミニ四駆の破損といったトラブルを、未然に防ぐことができるからです。
なお、スライドダンパーのバネは、前に強(銀色)、後に弱(黒色)を入れています。 コーナーを走る際、ミニ四駆が内側の方向を向くようにするためです。
前後ともにスライドダンパーにすると、FRPプレートに比べてミニ四駆の重量は重くなります。 それでも、コース壁からのショック吸収能力って、結構重要です。
2013年11月に開催されたミニ四駆グランプリのコース「ハイパーシャークサーキット2013」には、
デジタルカーブとウェーブセクションVer.2がありました(しかも連続です)。 ミニ四駆がスピードに乗った状態で突入すると、カクカクしたコーナーから受ける衝撃で、減速どころかコースアウトすることがあるのです。
実際、ミニ四駆ジュニアカップ・トレッサ横浜杯2013[秋]大会では、このセクションでコースアウトするミニ四駆が続出しました。 管理人も大会終了後のフリー走行に臨んだところ、4回中2回も、このセクションでコースアウトしてしまいました(>_<)
前後ともにスライドダンパーにすれば、コース壁からのショックをかなり吸収してくれるので、前述の過酷なセクションでも安定して走ることができるでしょう。
改造その2:車輪を全てショック吸収タイヤにしてみた
ショック吸収作戦その2ということで、4つの車輪を「中空ゴム 小径タイヤセット(ホイール付)」にしました。 ショック吸収タイヤは小径サイズなので、ライジングエッジのボディには当たりません。
このパーツのメリットは、「コース床からの衝撃を吸収することができる」ことに尽きます。 タイヤの内部が空洞になっているので、車輪自体にショック吸収能力があるわけです。 このため、他の車輪とは一味違った走行が可能です。
ただ、その性質のため、踏ん張りが効かないんですね。 デメリットは、
「ミニ四駆の重量を重くすると、コーナーで横転しやすい」
「モーターの力を床に伝える力が弱い(スピードが遅い)」
「逆走した場合、コースの継ぎ目を乗り越えて走り続ける」
などがあります。 マスダンパーとは、とても相性が悪いです。
それでも、今回は、あえてショック吸収タイヤでゆきます。 前後のスライドダンパーも相まって、まさに「コース壁床、ショック吸収大作戦」! かなり個性的なミニ四駆になりそうです(≧∇≦)
改造その3:ボディ全体をマスダンパーにしてみた
ライジングエッジのボディは、重い部類に入ります。 これを飾りにしておくのはもったいないので、以前紹介したブラストアローやサンダーショット エクスカリバーと同じく、ボディ全体がマスダンパーの役割を果たすように改造してみました(詳細は次の記事を参照)。
> 「ブラストアロー(MAシャーシ)の改造に挑戦してみたよ!」
> 「サンダーショット エクスカリバー(VSシャーシ)の改造に挑戦してみたよ!」
次の写真のように、ボディを持ち上げて手を離すと、シャーシに向かって落下します。 このため、ボディ全体がマスダンパーのように機能します。
ボディとシャーシの結合は、「ボールリンクマスダンパー(六角ウエイト)」のパーツ(アジャスター&ピロボール)を利用して実現しています。
ボディ後部には、加工した「スーパーXシャーシ・FRPマルチ強化プレート」を取り付けて、アジャスターをネジ止めしています。
ボディに穴を空けて、「アンダースタビヘッドセット」の青色スタビをビス止めして、ボディダンパーが電池(前輪のすぐ後付近)に当たるようにしています。 マスダンパーの取り付け位置は、「前輪のすぐ後ろが、最も安定する」からです。
> 詳細は、「ダンパーセッティングをマスターしよう!」を参照。
ボディと青色スタビの間には、カウンターギヤに入れるスペーサーを挟んで、高さを調節しています。 スペーサーを挟まずにビス止めすると、青色スタビがシャーシに当たらないため、着地がかえって不安定になる恐れがあるからです。 ボディダンパー化する場合、シャーシのどの箇所にボディのどの部分が当たるかは、重要なチェックポイントです。
また、シャーシとピロボールの間には、スペーサーを入れたり(高さ調節)、スプリングワッシャーを挟んだり(緩み防止)しています。 こういった細かい配慮も、大切なポイントです。
ボディの重さは、20.9g。 マスダンパー(ヘビー)の、およそ2.5倍の重量です。
ボディダンパー化は、ボディをただの飾りで終わらせない、合理的な改造です。 ボールリンクマスダンパーのパーツを活用すれば、ボディの取り外しがワンタッチになるので一石二鳥です。 一度、ぜひ試してみてください!
改造アドバイス
まずは、ネジを通す穴の位置を特定します。 ボディにFRPプレートを当ててから、ピンバイスで軽く傷をつけておきましょう。 その後、あらためてボディに穴を空けます。 ピンバイスを貫通させたら、反対側からも突き通して、穴の入り口を広げておきます。
ブレーキスポンジの余りと、液状タイプの瞬間接着剤(「タミヤ瞬間接着剤《高強度タイプ》」など)を用意します。 ブレーキスポンジは、両面テープが貼ってあるタイプが便利です。 ブレーキスポンジを適当な大きさに切って、ピンバイスで穴を空けて、ボディとビスの間に挟みます。 こうすれば、ボディをビスから保護するクッション・すき間を柔軟に埋めてくれるスペーサーになります。
ボディの裏側にも、適当な大きさに切ったブレーキスポンジを貼ります。 ボディとFRPプレートのすき間を埋めるように貼るのがポイントです(理由は後述)。 その後、FRPプレートをビス止め(ロックナット、または、ナット&スプリングワッシャーで固定)します。
ボディ表面に貼り付けたブレーキスポンジは、飛び出た部分が目立たないようにカットします。 また、ボディを取り付けて、FRPプレートやビス止めした部分がシャーシに当たらないことを確認しておきましょう(深く落下した状態で当たる場合は問題なし)。 この後で取り付ける青色スタビが、前輪のすぐ後付近に優先して当たるようにするためです。
ボディとFRPプレートのすき間を埋めるように、ブレーキスポンジを追加で貼ってゆきます。 一通り貼り終えたら、液状タイプの瞬間接着剤をブレーキスポンジに染み込ませます。 瞬間接着剤が乾燥すれば、ブレーキスポンジが強固なスペーサーとなるので、FRPプレートを補強することができます。
青色スタビを取り付ける位置にスペーサーを置いて、周囲に液状タイプの瞬間接着剤を垂らして、間接的に接着させます。 余分に出した分は、すぐにティッシュの先を当てて、水分を吸い取りましょう。 瞬間接着剤が乾燥したら、スペーサーの穴にピンバイスを入れて、ボディに穴をあけます。 ピンバイスが貫通したら、裏側から青色スタビを当ててビス止めします。
改造その4:スタビヘッドをバンパーの下に取り付けてみた
前のスライドダンパーの下に、スタビヘッドを取り付けました。 ミニ四駆が走行中に浮き上がっても、コースの壁に乗り上げるのを防ぐことができます。
下の写真は、制作途中のものです。 スタビヘッドが無い状態だと、ガイドローラーを止めるビスがコースの壁にひっかかってしまうのが分かります。 レース中にこうなると復帰は困難で、ほぼリタイア(失格)となってしまいます。
スタビヘッドの悪影響がないか、確認してみました。 スライドダンパーの動きを妨げたり、コーナーで壁に当たらないことが分かります。
前のスライドダンパーを止めるビスには、「2mm丸ビス用ハイトワッシャー(6個)」を挟んでいます。 アップダウンでの、コース床との接触がスムーズになります。 また、コースに与えるダメージも減少します。
ハイトワッシャーは割と高価なんですが、「フロントアンダーガード」の代わりにもなるので、持っておいて損は無いパーツです。
改造アドバイス
リーマーという工具を使って、スタビヘッドの穴を広げます。 下の写真(左側)で、左が加工前、右が加工後のスタビヘッドです。 リーマーは、「ポータブルツールセット」に入っています。
スタビヘッドの穴を広げる際は、時々ビスを入れてみましょう。 穴を広げ過ぎると、ビスで取り付けることができなくなるからです。 ビスの頭が、ちょうど隠れるぐらいまで広げるのが理想です。
スタビヘッドを取り付ける際は、スプリングワッシャーを挟んでおきましょう。 コースからの衝撃でナットが緩むのを、防ぐことができます。
ロックナットでも構わないのですが、このケースでは、ナット+スプリングワッシャーの方が、見た目が良くなります。 見た目って、重要です☆
改造その5:他のグレードアップパーツに変更してみた
今までの改造と同じく、今回も各種グレードアップパーツに変更しました。
- 軸受けを620ボールベアリングに変更
- ターミナルをゴールドターミナルに変更(裏側に緑スポンジをセット)
- カウンターギヤの軸受けを520ボールベアリングに変更
- ギヤシャフトをフッ素コートに変更
- ホイールにシャフトを貫通
これらは全て、ミニ四駆のスピードアップにつながります(詳細は次の記事を参照)。
> 「エアロアバンテ レッドスペシャル(ARシャーシ)の改造に挑戦してみたよ!」
> 「サンダーショット エクスカリバー(VSシャーシ)の改造に挑戦してみたよ!」
ホイールシャフトを貫通させて飛び出た部分は、加工したピニオンギヤでふさぎました。 以前、ジャパンカップでの事前車検の際、「できれば何かでふさいでください」と言われたからです。 スタッフがミニ四駆を回収する際、ケガをしないようにするための配慮なんですね。
よくよく考えれば、コース内で待機しているスタッフは、のべ数千台ものミニ四駆を回収するわけです。 レギュレーション(公式大会の規則)でも、コースを汚したり傷つけたりする改造は禁止されています。 飛び出た部分はホイール内に収まっているので危険性は低いのですが、それでも、安全性の配慮をするに越したことはありません。
ライジングエッジは3レーン用のミニ四駆ですが、安全性の配慮を習慣化させるため、あえてふさぐことにしました。
改造アドバイス
ブレーキスポンジは適当な大きさ(幅3mm、高さ5mmぐらいがお勧め)に切って、ターミナルをセットする前に貼り付けます。 スポンジの貼り付けには、「タミヤ瞬間接着剤(ゼリータイプ)」を使用しています。
なお、すでにターミナルをセットしたミニ四駆でも、(ターミナルを折らないように気をつけながら)ペンチで引っ張り上げれば、ブレーキスポンジを入れることが可能ですよ☆
ピニオンギヤの加工は、8枚の歯を全てカットした後、飛び出た部分の長さに合わせて、さらに短くします。 ミニ四駆の駆動部分は、そうでない部分に比べて軽量化の効果が大きいので、少しでも軽いに越したことはありません。
水を入れたペットボトルを、足に縛り付けて走るのと、背負って走るのとでは、かなり違いますよね? それと同じです。
まとめ
今回の改造をまとめると、次のようになります。
- ①前後のバンパーをスライドダンパーにした ※安定性アップ↑
- ②車輪を全てショック吸収タイヤにした ※ 〃
- ③ボディ全体をマスダンパーにした ※ 〃
- ④スタビヘッドをバンパーの下に取り付けた ※ 〃
- ⑤他のグレードアップパーツに変更した ※スピードアップ↑
重量は、電池無しで125.8gです。 今回は、マスダンパーを取り付けない方向で改造したので、これ以上重量を増やさずにすめば、軽い部類に入ります。
このミニ四駆を、越谷レイクタウンにあるミニ四駆ステーションのコース(下の写真)で走らせてみました。
ショック吸収タイヤのおかげで、ジャンプして着地するたびに「パスン、パスン」と音を立てる、独特の走りを見せてくれます。 タイヤのグリップ力が低いのが幸いして、1度スピードに乗れば、コーナーの走りもスムーズ。 前後のスライドダンパーも、効果を発揮してくれているのでしょう。 ただ、通常の車輪と比べると、やはりスピードは遅めです。
モーターを「ライトダッシュモーターPRO」に変更したら、ジャンプ台の先にあるバンクに激突。 スピードは遅めでも、重量が軽いからなんですね。 ブレーキスポンジに貼っていたテープを外してブレーキを有効にしてみると、手前で着地するようになりました\(^o^)/
思い切って、モーターを「ハイパーダッシュモーターPRO」に変更。 すると、ジャンプ姿勢が前のめりになって、着地が不安定に(汗) ここで、「ミニ四駆超速ガイド2013」に掲載されている盛厚太郎さんの言葉「安定性を高めるにはリア(後)を重くすることが重要」を思い出しました。
- リヤにセッティングウエイトなどを取り付けて、後部を重くするか?
- 前のスライドダンパーを外して、前部を軽くするか? ←相対的にリヤが重くなる
これ以上重量を増やしたくなかったので、後者を選択。 前のスライドダンパーをFRPプレートと交換してみました。 すると、今度は別のセクション(下の写真、時計回りに走って、奥のコーナーから立体交差の下に落下する地点)でコースアウトするようになってしまいました(>_<)
走りを安定させるには、一定の重さも必要なんですね。 ミニ四駆って、難しいです。 でも、そこがまたイイんですよね(≧∇≦)
前をスライドダンパーに戻して、ブレーキスポンジをグリーンからブラックに変更しようとしたところで、タイムアップ。 ハイパーダッシュPROモーターで完走させることはできませんでしたが、仕上がり感は良好です。 店舗レースでも、ぜひ走らせてみたいですね♩
余談ですが、マスダンパーが当たり前になった今、あえて取り付けないで走らせることに挑戦するのも、面白いのではないでしょうか? マスダンパーに頼らずに、ミニ四駆はどこまで走ることができるのか。
今まで通りマスダンパーを使いつつ、一方で、無い状態にもチャレンジしてみる。 そうすれば、より効果的なマスダンパーの使い方ができるようになる気がするんですね。 もしかしたら、今まで見えなかった風景(新しい世界)が、見えてくるかもしれません。
以上、ライジングエッジ(MSシャーシ)の改造でした(^-^)